VIVA NEWS
掲載日2018.01.23
更新日2018.01.23
【歯ブラシの歴史/第8回】歯口清掃と歯磨きの生い立ち
日本の歯磨きのこと
歯口清掃の歴史は、日本国において、自然発生的に発生してはいたようですが、中国あるいは西洋との文化交流があったことによってさらに発展してきたといえるでしょう。歯磨きの方法も昔から伝えられてきました。曹洞宋の開祖・道元は著書『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』の洗面の巻きで、洗面の仕方、歯の磨き方をこと細かく解説しています。現代でも通用するというから驚きですね。
『正法眼蔵』「洗面」にか書かれている歯の磨き方について、具体的に見てみましょう。
〔楊枝を〕よくかみて、歯の上、歯の裏を磨くがごとく洗うべし。
たびたび磨いて洗いすすぐべし。歯のもとの肉の上もよく磨き洗うべし。
歯の間もよく掻いて清らかに洗うべし。
口を漱ぐことをたびたびすれは、漱ぎ浄められる。
その後、舌をこそぎ洗うべし。
このように、歯ブラシとしての楊枝の使い方が細かに示されています。それほどまでに歯磨きにこだわったのは、弟子の口臭が耐えられなかったからとも言われていますので、歯の磨かない人間の臭いことは、今も昔も変わらないですね。彼は、どんな修行も苦にはならなかったが、耐えられなかったのは、毎日接する徳の高い僧たちの口臭であったというのは、面白いエピソードです。
歯ブラシの「原型」を特定するのは難しい
ちなみに、他の国で歯ブラシの「原型」が作られたのは、いつの時代かを限定するのは難しいといわれています。というのも、例えばエジプトで発掘された古器物の化粧品箱の中から、長さ1.5センチくらの獣毛を束ねたものが出てきたが、それが”はけ”なのか”ふで”なのか”ブラシ”なのか区別がわからないからです。
また、歯磨き粉も古代エジプトで発見されています。驚くべきことに、西洋では、古代エジプト(BC3000-1500頃)の「練り歯磨き」と「粉歯磨き」のことが全長21mの長さのパピルスに詳しく記載されているそうです。練り歯磨の組成は、下記の通り。
<煉り歯磨き>
ビンロウ樹の実(タンニン)
緑粘土 研磨剤・粘結剤
蜂蜜 粘結剤、甘味料として
火打ち石(石英の一種) 研磨剤
緑錆 細菌抑制効果 殺菌作用
まず「ビンロウの実」はヤシ科の植物の実であり、これは粉末状に砕いて使用していました。「ビンロウ」は噛みタバコ、ガムといった嗜好品や、虫下しの薬、漢方などにも使用されているさまざまな用途がある実です。
次に「蜂蜜」は甘味料と結合剤として使われ、「緑青」は銅などが酸化した際に付着する錆ですが、これは細菌活動の抑制と殺菌効果が得られるために使用されていたそうです。
そして「緑粘土」は、ナイル川が氾濫した際に川から運ばれる肥沃な土から作られた緑の粘土であり、これはそのまま研磨剤や結合剤として使用されました。これらをすべて練り合わせ、ペースト状の歯磨き粉が作られていたそうです。